入賞作品

第21回 : 身体と頭脳を鍛えるコミュニティモデル

最優秀賞

最優秀賞

山根俊輔、岡島由賀(広島大学大学院)

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審査委員長 伊東豊雄
アイデアという点ではたいへん素朴であった。過疎の村で廃屋の廃材を利用して手づくりの図書館をつくり、廃屋の跡地に鹿の飼料となる緑を育てようというコンセプトである。この素朴なアイデアで勝てたのは、この地域をつぶさにリサーチした提案のリアリティにあったことに尽きる。
審査委員 川瀬貴晴
現代日本の地方都市の現状を地球環境問題の視点に絡めて今回のテーマと関連付け、具体的な地域に即して将来のあり方を考えたもので、縮小する都市におけるコミュニティのあり方をどうするかという現代日本の大きな課題に対して生活感ある対応案を考えたという点で、表現上、細かな点で気になった点もあるが、共感できた。
審査委員 北川原温
廃屋の廃材を使って公共空間をつくるという発想が現代的で印象的だった。公開審査のヒアリングでは実現性は薄く、事業の仕組みにも矛盾があるように思えたが、そのコンセプトの根に、弱さとか未来を志向しない諦観のようなものが纏わりついている。その点がクールで現実的とも言えるが、このような提案に関心が集まること自体に、この社会が抱える問題の深刻さを感じる。それを提案者が意識しているのかは分からないが、もしお見通しだとすれば、とんでもない洞察力を持っている人だ。将来が楽しみ。
審査委員 塚本由晴
宮島の風景の変貌をいくつかの具体的な要素(植物、鹿、空家、空地、本)の振る舞いとして理解し、これを組織し直すことで、普通なら絶望しか生まない物事の連関の中に、不思議な熱気を生じさせている。それはまるで些細な要素の小さなつぶやきに耳を傾け、これを集めることによって、大きな叫びに変えているかのようである。そうした要素の取り扱いを通して、人間が振る舞いを共有していくという局面が、コミュニティ形成には必ずある。そのことを示した点において優れていたと言える。しかし、ローコストでボランティアのような枠組みでしか成立しないのでは、環境技術の提案はおろか、建築家は活動を続けられるのだろうか、という疑問を残した。
審査委員 中島正人
実在の街を再生させる提案であり、地方の衰退と鹿の食害の問題に対し、その解決策を具体的に示したことで好印象を得た作品であった。
審査委員 村松映一
人口減少と鹿の食の確保という現実を受け入れ、生態系の新陳代謝を生かし、文明の象徴である本を媒体とした参道によるコミュニティを創造することで、鹿と人の共生する街へと変えていこうとする説得力ある提案である。
審査委員 六鹿正治
厳島神社のある町、宮島の過疎化と鹿の被害という問題にユニークな解決案を提示することで設問に答えている。人口減少・少子高齢化と地方の過疎化、そして地球温暖化が遠因の野生動物の生態の変化による人里への被害など、現代の日本や世界が直面する課題を、地域の特有の問題に引き寄せて解決を試みたという点が注目される。いわばローカルな問題探求の中に、グローバルな問題解決のヒントがあることを見事に示したと言える。